福岡高等裁判所 昭和47年(ツ)23号 判決 1973年1月23日
上告人 竹田産業株式会社
右代表者代表取締役 竹田力
右訴訟代理人弁護士 藪下晴治
上告人補助参加人 杉本統美
被上告人 亡後藤総市訴訟承継人
後藤アサ
<ほか四名>
右五名訴訟代理人弁護士 宮原勝己
主文
原判決を破棄する。
本件を熊本地方裁判所に差し戻す。
理由
上告人、上告代理人藪下晴治、上告人補助参加人の各上告理由、被上告人ら代理人宮原勝己の答弁は、別紙記載のとおりである。
上告代理人藪下晴治および上告人補助参加人の上告理由について
右上告理由は上告理由書提出期間後に提出されたものであるから、適法な上告理由にあたらない。
しかしながら、所論にかんがみ職権をもって審按するに、本件記録によれば、次の事実が認められる。すなわち、本件は、被上告人(第一審原告)が上告人(第一審被告)に対して負担する八代簡易裁判所昭和三二年(ノ)第四八号調停調書に基づく金三九万円および遅延損害金の貸金債務について、第一審原告が訴外志水サカエほか四名から、同訴外人らが第一審被告に対して有する合計金六九万円の貸金債権の譲渡を受け、これを自働債権として、第一審被告に対して負担する前記調停調書に基づく債務と相殺したと主張して、第一審被告に対し請求異議の訴を提起したところ、第一審被告は右債権譲渡の効力を争い、上告人補助参加人は、第一審において、第一審被告に対する金一一〇万円の貸金債権を被保全権利として第一審被告の第一審原告に対する前記調停調書に基づく債権の仮差押をしたことを理由として、第一審被告のために補助参加をなし、独立して攻撃防禦方法を提出した事案であるが、第一審においては、第一審被告および上告人補助参加人の主張はすべて排斥されて第一審原告が勝訴し、第一審判決は補助参加人にも送達されたが、第一審被告のみ控訴を申し立てたところ原審は上告人補助参加人に対し控訴状その他の訴訟書類の送達をせず、かつ上告人補助参加人を全く口頭弁論期日に呼び出さず弁論に立ち合わせないで審理していることが認められる。
ところで、第一審における補助参加は控訴審においても当然その効力を有するのであり、かつ補助参加人は主たる当事者から独立した機能をもって訴訟に関与するものであるから、控訴審としては、第一審の補助参加人に対し、当事者と別に訴訟書類を送達しかつこれを口頭弁論期日に呼び出し弁論に立ち合わせなければならないのであって、(したがって、これに対する呼出を欠くときは期日を適法に開けないこととなる。)前記認定のとおり、右手続を全くしなかった原審の訴訟手続には法令の違背があるものというべく、かつ、補助参加人は独立して攻撃防禦方法の提出その他一切の訴訟行為をなす権利を有するのにかかわらず、原審は上告人補助参加人をして右権利を行使する機会を全く与えず、上告人(第一審被告)をして補助参加による利益を受けることを不能ならしめたものであるから、原審における右訴訟手続の法令違背は判決に影響を及ぼすことが明らかであり、しかも右法令違背は原審の訴訟手続全体を不適法ならしめるものであって職権調査事項にあたるものというべきである。
よって、上告人の上告理由について審理判断するまでもなく、原判決は破棄を免れず、上告人補助参加人を弁論に関与させてさらに審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととし、民訴法四〇七条一項に従い主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 松村利智 裁判官 塩田駿一 境野剛)
<以下省略>